2015年1月30日金曜日

恐ろしいのはエイミーだけじゃない『ゴーン・ガール』


GONE GIRL by David Fincher


『ゴーン・ガール』とても面白かったです。
149分だけど、全然長くない。色々と恐ろしくなる映画だけど、
すごく笑える映画。キャストも素晴らしい。

僕は、ニックの弁護士と感情を共有していると思います(笑)

そのレビューです。





美しい男女。
気の利いた出会い。幻想的なキス。洒落たプロポーズ。
2人だけのサイン。
それは結婚後も続く。
数年は。

失職による経済状況の悪化。
都市から田舎への引っ越し。
理想の人物になろうとする努力、ふるまいへのストレス。
そこから生じる夫婦間の不和。
そして夫の浮気が発覚。
ここまでなら、どこにでもありそうな話。

そのどこにでもありそうな話が、
どこにもない話に変貌を遂げるのは、賢い妻の飛び抜けた行動力による。


その妻、ロザムンド・パイク扮するアメイジング・エイミーは、
文字通り、アメイジングだ。

エイミーは美しく、賢く、柔軟性を備えているが執念深く、
そして、とてもたくましい。

彼女は、泣き喚いたりするような女じゃない。
夫であるニックの双子の妹とは違って。

感情をコントロールできずに爆発させるなんてことは、
彼女の理想とする女のふるまいではない。
しかし。
髪の色を変え、化粧もろくにせず、
コテージで隣人にナンシーと名乗るエイミーはちょっと違う。
美しく良き妻をふるまうことから解放された、
彼女はとてもチャーミングなのである。

ムカつく発言をした女が、席を外した間に、
その女のグラスにツバを吐きつけるなんて最高だ。

ただし、彼女が恐ろしい女であることに変わりはない。
エイミーには、自らのシナリオを書き直す能力も行動力も備わっている。
その能力は、自殺を検討させるし、他人を利用して殺すほどである。


上映後、隣に座っていた女の子たちが、
口を揃えて「怖いわー」と言っていたが、たしかに怖い。


ただ恐ろしいのはエイミーだけではない。
ニックもまた恐ろしい。

不利な状況だと言われ、降りたほうがいいと進められたTVショーに、
自信をもって出演したニック。
彼女がTVを見ることを分かっていて、
彼女の好きなスーツとタイでTVを通して語りかける。
そして最後に、あごに指をあてる。
それは夫婦、2人にしか分からない特別なサイン。

彼は確信していた。これで彼女が戻ってくるだろうと。
だからこそ、血だらけで戻ってきたエイミーを見ても、驚かない。
フラフラなエイミーを抱きかかえ、耳元で「ファッキン・ビッチ」と囁く。
そのような意味において、
ニックはエイミーを十分に理解しているし、コントロールをもしている。

彼女がそれすらも理解して、帰る決心をしたかどうかは、さほど重要ではない。
アクションに至らせたという点が重要なのである。

彼女の帰還後、「アメイジングな夫婦」の完璧なふるまいが始まる。
それは、失踪事件以前よりも、心ないふるまいであると同時に、
もしかしたら失踪事件以前よりも、2人の結びつきが強くなるふるまいであるかもしれない。

なぜなら彼らは完全に共犯関係にあるからである。

頬にキスするのではなく、
キスしているように見えればいい。

舞台上で言葉を濁せば、「and」と催促される。

ただの仮面夫婦からアメイジングな仮面夫婦へ。
2人にあたるスポットは眩しい。
だが、しかしそれも束の間だ。
それが分かっているからこその妊娠。
セックスもしていないのに。

子は鎹。本当にエイミーは優秀だ(笑)


映画は、シーンの迫間に、
「失踪から何日目」とテロップで提示する。
しかしラストカットに、それは出てこない。

怒鳴って壁にぶつけるくらい、彼女を憎んだニックが、
ベッドで髪が短いままのエイミーのアタマを優しく撫でている。
それは失踪から帰ってきた時の長さだ。
お腹も大きいようには見えない。
ニックの諦念を帯びた声と、エイミーの変わらぬ眼差し。

ニックは失踪後、何日目でその行動に至ったのだろうか。
我々がそれを知るすべはないが、十分だろう。




ハッピーで話題性のある写真をシェアするのではなく、
人には言いにくい秘密を共有すること。

それは、ある種の共犯関係を結ぶ。
強い結びつきだ。

ニック側の弁護士と刑事は舞台から降りてしまえば、どうってことないが、
生まれる前から一緒にいた双子の妹はどうなるのだろうか。
真実を教えてと、双子の兄に問いただした妹は。

真実は、恐ろしい。
舞台裏は、恐ろしい。

そして程度の差こそあれど、
その「ふるまい」や「構造」は僕らの世界でもよくあること。
それでも生きていくのが人間だ。


デビッド・フィンチャーが『ソーシャル・ネットワーク』の
監督であることもほんの少し皮肉が効いている。


まぁ、『ドラゴン・タトゥーの女』で、
カート・ヴォネガット『国のない男』のページを破って、
暖炉に火をつけさせる監督だもんね(笑)

もちろん、それはただのウインクだけど。




アメイジング・エイミー!




後輩





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