黒沢清『リアル~完全なる首長竜の日~』 レビュー
耳をすまさずとも、「音楽」は鳴り響く。
それほど注意を払っていなくても、
自然と耳に入ってくるだろう。
黒沢映画にとって、「音楽」は物語のガイドラインだ。
ここは、怖がってください。
ここは、恋のシーンです。
ここは、緊迫したシーンです。
音楽は、それを端的に観客に示している。
なんでもないシーンが、
音楽によって、緊張感を増幅させ、
おどろおどろしい雰囲気を醸し出す。
もちろん、どの映画やどの映像も、
音楽にその役割を課していることが多いけれども、
黒沢清の作品において、それは顕著な気がする。
さすがにバッハの『G線上のアリア』は流れないけども、
『トウキョウソナタ』のラストは、ドビュッシーの『月の光』(笑)
『LOFT』を見た際にもそれは強く感じたし、
今回の『リアル~完全なる首長竜の日~』でもそう感じた。
バッハ『G線上のアリア』
ドビュッシー『月の光』
僕は、そこに黒沢映画の面白みを感じてしまうと同時に、
ちょっとニヤニヤしてしまう(笑)
物語を丁寧に映像化していくのではなく、
ぶつ切りのシーンを「音楽」という接着剤で、
繋げてしまう、その「横暴さ」にニヤけてしまうのだ。
音楽だけでなく、音も強く作用している。
紙に描かれた二次元のピストルが、
三次元の世界に現れる時、
そのピストルの「カチャッ」「カチャカチャ」という音によって、
ピストルは「本物らしさ」を増していく。
その音の作用が効果を発揮するのも、
役者や画に力があるからこそ可能なことのように思う。
『リアル~完全なる首長竜の日~』は127分。
黒沢清の映画史において、この映画は最も長い。
原作は読んでいないので分からないけども、
それでもコンパクトにまとめたのだろうということが想像できる。
観れば、それに関しては頷けるはず(笑)
「音楽」という強力な接着剤を用いることによって、
物語を成立させる。
そして音楽があるからこそ、
『リアル~完全なる首長竜の日~』は、
多様なジャンルが共存できているのだとも思う。
設定も物語も置いて、
映像と音楽でシーンを見させてしまうのが、
黒沢清の素晴らしさであることは間違いないだろう。
その確信犯的な「軽やかさ」というか「横暴さ」が、
僕は好きです(笑)
『リアル~完全なる首長竜の日~』における、
「色」は、繊細に扱われているように思う。
血色を抑えたメイク。そして衣装。
それは観てもらえれば分かると思う。
そして黒沢映画を見ている人なら、分かるように、
今作でも「水」は重要な要素になっている。
水は気体と化し、霧として
「壁」や「扉」として、佐藤健と綾瀬はるかの前に現れる。
そして水は、
「彼」にとっても扉として機能する。
そこからが、僕は一番興奮しました。
これでおしまいじゃないよなっていうところで、
再登場してくれたので、最高でした。
観てない人にとっては、
わけがわからないかもしれませんがいいんです。観てください(笑)
そこからが、タイトルにあるように、
黒沢清のジュラシック・パーク!
(ようやくこの話)
パイプが倒れて音が出ちゃう!なんて、
ブラキオ・ラプトルとちびっ子2人のシーンが脳裏に浮かび、
スピルバーグの『ジュラシック・パーク』に興奮した、
小学生時代を思い出しました(笑)
CGチームの活躍抜きに、この映画は語れないでしょう。
中谷美紀さんもすごく素敵でした。
寝ている佐藤健に語りかける病室のシーンなんかは
ドキドキしちゃうこと、間違いなしっす。
動き始める死体や、フィロソフィカル・ゾンビにも笑いました。
綾瀬はるかや、食い気味の佐藤健も好演していたように思います。
初日だったからか、
佐藤健ファン(!?)の中年女性が多かったように思います。
彼女たちがこの映画を観て、
どんな感想を持ったのかはちょっと気になるとこです(笑)
興味ある方は是非。
『リアル~完全なる首長竜の日~』 トレイラー
オフィシャルサイト
後輩
0 件のコメント:
コメントを投稿